「鍵の交換費用には、定価というものが存在しないに等しいんです」。都内で長年、分譲マンションの鍵トラブルに対応してきた専門業者の店主は、そう苦笑いしながら切り出しました。インターネットで検索すれば「三千円から」といった格安の広告が目に入りますが、実際に見積もりを取ると数万円になるケースがほとんどです。消費者が不信感を抱きやすいこの業界において、分譲マンションの鍵交換における本当の「適正価格」とは何か、専門家の視点から詳しくお話を伺いました。 店主によれば、まず部品代の適正価格を見極めるには、メーカーの希望小売価格を基準にするのが一番だと言います。例えば、国内トップシェアを誇る美和ロックのディンプルキーであれば、部品自体の価格はある程度決まっています。これに業者の利益が数千円上乗せされるのが一般的です。もし見積もりの部品代が、公表されている価格の数倍もするのであれば、その業者は避けたほうが賢明です。逆に安すぎる場合は、防犯性能の低い古い型番の在庫処分品であったり、粗悪な模造品であったりするリスクがあるため、注意が必要だそうです。 次に施工費についてですが、ここが最も業者によって差が出る部分です。「出張費込みで一万五千円から二万五千円程度であれば、真っ当な技術料と言えます。マンションの玄関ドアは特殊なダブルロックも多く、二箇所同時に交換する場合などは、手間を考えても三万円から四万円が妥当なラインでしょう」と店主は語ります。高額すぎる請求としてよくあるパターンは、不必要な錠前全体の交換を勧められたり、緊急対応を理由に不透明な加算をされたりするケースです。一方で、極端に安い施工費を提示する業者は、現場に来てから「このドアには特殊な作業が必要」と言って、次々と追加料金を積み上げていく手法を取ることがあるため、注意が必要です。 専門家としてお勧めする適正な依頼方法は、まず電話やメールの段階で「型番」を伝え、概算の総額を確認することだそうです。分譲マンションの鍵であれば、ドアの側面の金属板にメーカー名や型番が刻印されているため、それを伝えれば本来は正確な見積もりが可能です。また、作業後の保証期間についても確認しておくべきだと言います。「安さだけで選ぶのではなく、何かあったときにすぐに駆けつけてくれる近隣の店舗を構えた業者を選ぶこと。それが結果として、余計な費用をかけずに済む一番の近道ですよ」。この言葉には、数多くの現場を見てきたからこその確かな説得力がありました。
鍵の専門家が語る分譲マンション鍵交換の適正価格とは