たかが合鍵一本、と軽く考えてはいませんか。特に、手元にある合鍵からさらに合鍵を作ろうとする行為は、後々の深刻な鍵トラブルを招きかねない、非常にリスクの高い選択です。その危険性は、主に「精度の低い鍵がもたらす物理的なダメージ」と、「防犯上の脆弱性」という二つの側面に集約されます。まず、物理的なダメージについてです。合鍵から作られた合鍵は、コピーを重ねるごとに誤差が蓄積され、純正キーが持つ本来の正しい形状から、少しずつずれていきます。この「少しのずれ」が、鍵穴の内部で静かに、しかし確実にダメージを蓄積させていくのです。具体的には、以下のようなトラブルが発生します。第一に「鍵が回りにくい、固い」。精度の低い鍵は、鍵穴内部のピンを適切な高さまでスムーズに押し上げることができず、無理な力が必要になります。第二に「鍵が抜けなくなる」。鍵の山の形が不正確だと、シリンダー内部のピンに引っかかり、差し込んだはいいものの、抜けなくなってしまうことがあります。そして、最も深刻なのが「シリンダーの故障」です。不正確な形状の鍵を日常的に使い続けることは、ヤスリで鍵穴の内部を削っているようなものです。内部のピンが摩耗し、変形してしまうと、最終的には正しい純正キーを使っても開けられない状態に陥ります。こうなると、錠前(シリンダー)ごと交換するしかなく、数万円単位の予期せぬ出費につながってしまうのです。次に、防犯上のリスクです。特に、ディンプルキーに代表されるような防犯性の高い鍵は、メーカーによって厳格な管理がなされており、セキュリティカードや登録情報がなければ、そもそも純正の合鍵を作ることができません。もし、合鍵から合鍵を作れてしまうような店があったとしても、その鍵は極めて精度が低く、防犯性能は無いに等しいと言えるでしょう。また、そのような管理の甘い鍵は、不正に複製されるリスクも高まります。「安物買いの銭失い」とは、まさにこのこと。目先の数百円を惜しんだがために、将来的に数万円の修理費用と、計り知れない安全への不安を抱え込む。合鍵から合鍵を作るという選択は、それほどまでに大きな危険性をはらんでいるのです。